被告人は、令和２年〇月◇日午後１０時５２分頃、パク島より西へ約200m付にて西に向って走行していた【猫の穴】の船舶に対し、故意に船舶を衝突させ乗組員に負傷させ、なおかつ被害者が狩り中だったにもかかわらず、その獲物の海獣を仕留め、利益を横取りしたものである。

罪名及び罰条，強盗傷害罪、刑法第 240 条。

 裁判長　　 これから今朗読された事実についての審理を行いますが、被告人には黙秘権があります。ただしこの法廷で述べたことは被告人の有利不利を問わず証拠として用いられることがありますから質問に答えるときはそれに注意してください。それでは最初の質問です。今、 検察官が朗読した事実について何か違うところはありますか。

被告人　　　私は故意に船舶を衝突させていません。それに海獣の横取りも故意にしたものではありません。

裁判長 　　 それでは証拠調べに入ります。検察官、冒頭陳述をしてください。

検察官　　　被告人は当時海獣制圧のミッションを抱えていたが砲弾数が足りず悩んでいたところに被害者の船舶が目に留まった。場所は海域の外れで周りに他の船舶はいない場所で被害者は狩りをしていた。被告人は獲物を横取りするには絶好の機会と考え、被害者の船舶に故意に衝突し、その隙に獲物を仕留め利益を横取りした。

裁判長 　　　それでは弁護人、冒頭陳述をどうぞ。

 弁護人 　　　被告人は故意に衝突させたのではありませんでした。前方の注意を怠ったために被害者の船舶に衝突したのです。また、被告人はパク島に帰るために走行していましたが、途中で自動狩りを行っており、その自動を解除せず走行していたために被害者の狙っていた獲物に砲弾がたまたま当たってしまったのです。

また、砲弾数が足りなかったとの指摘ですが、今は毎日砲弾の補給があるので海獣制圧のミッションはさほど逼迫したものではありませんでした。

そして被告人は比較的おとなしいとされるラッコ族で、なおかつ漁の名人です。故意に衝突させてまで獲物を横取りするとは考えにくいです。以上です。

裁判長　　　 では引き続き被害者及び目撃者の証人尋問を行います。では検察官、どうぞ。

検察官　　　あなたの職業を教えてください。

証人A　　　ワールド経営を生業にしています。同行者にラッコ族を雇っています。

検察官　　　あなたの所で働いているラッコ族はどのような性格ですか？

証人A　　　ワールド経営では敵も多いので、道中戦って貰っています。性格は勇ましいというか頼りになるというか...。ラッコ族は見た目とは裏腹に海での肉食動物なので戦闘力は高いと思います。経営中でも「戦闘型のラッコは見たことあるか？キキッ！」と言っていますし、血の気の多い種族なんだな、と思っていました。

検察官　　　ありがとうございます、以上です。

次の証人をお願いします。あなたの職業を教えてください。

証人B　　　【猫の穴】の乗組員です。

検察官　　　乗組員は総勢何名ですか？

証人B　　　現在37名です。

検察官　　　衝突された当時の様子を教えてください。

証人B　　　あの日は「高級船舶改良の部品」を集めるために狩りをしていました。あの周辺はそんなに海獣がいないので、囲まれることなく安全に狩りができる上に海域の外れの方なので他の船舶もあまりいませんでした。なので自動狩り状態にして乗組員は自由気ままに過ごしていたんですが、突然衝突されてしまって...。身を構える暇もなかったのでみんなケガをしてしまって...。うちは【攻撃Lv３、防御Lv１】しかスキルが無い弱小船舶なのにこんな事になってしまって…。う、うぅぅぅっ！

検察官　　　お辛い中ありがとうございました。以上です。

証人B　　　あ！ちょっと待ってください！うちは【毎週日曜日22:30～ギルド討伐、模擬拠点戦不定期】開催しています。よろしくお願いします！

弁護人　　　異議あり！今の証言は本件とは無関係です！

裁判長　　　異議を認めます。証人は席へお戻りください。では被告人質問をどうぞ。

弁護人　　　まずあなたの事について聞きます。あなたは今まで他人に暴力を振るった事はありますか？

被告人　　　いいえありません。

弁護人　　　漁の名人という事ですが、当時の狩りの成果はどれくらいでしたか？

被告人　　　ほぼ海にいるので海の事は熟知しています。船舶も最大に近く強化しているので大概の海獣は危険なく仕留められます。

弁護人　　　砲弾30発で何匹くらい仕留められますか？

被告人　　　1発で2匹仕留められる場所を狙って狩っていますので50～60匹くらいですかね？

弁護人　　　では他人の横取りをする必要は無かったと。

被告人　　　そうですね。ほぼ1発で仕留められるのでわざわざ他人が削った海獣のラスアタを奪いに行く必要はありませんね。

弁護人　　　わかりました。以上です。

裁判長　　　では検察官反対尋問をどうぞ。

検察官　　　当日あなたの船の航行ルートを確認してみましたが、海の監獄島から居住地であるパク島まで一直線に北東に向かって進んでいましたね？でも衝突現場近くで急に進路を変更し、まっすぐ北上している。これは何故ですか？

被告人　　　え？そ、それはカモメの群れが見えたので…漁場があるのかと思って進路変更したんです。

検察官　　　当時の魚群探知機の記録では付近に反応はありませんでしたが？

被告人　　　そ、そうなんです！見間違えたみたいで漁場が無くてがっかりしたんです。

検察官　　　そうですか、それでは質問を変えます。パク島の西に島があるのはご存じですか？

被告人　　　え？いや、あ、…はい。知っています。

検察官　　　あなたの航行記録を見て気付いたのですが、あなたはあの島に足繫く通っていますね？あの島は衛星地図でもモヤがかかって所在の確認が取れていませんよね？そんな存在が知られていない島に何の用で通っていたんですか？

被告人　　……。

検察官　　　黙秘ですか、いいでしょう。あなたは人に言いたくない事を行いにあの島に通っていた。もちろん他人にもあの島の事を知られたくなかったでしょう。ところがあの日、被害者の船が島に近付いていくのが見えた。焦ったあなたは慌てて進路変更して追いかけた。被害者はあの島に上陸するつもりは無く、ただ自動狩りで移動していただけだったのにあなたはどんどん島に近づく被害者の船に上陸するのではと不安を感じた。そしてどうしても上陸させたくないあなたは船に衝突して進行を止めるという強硬手段に出た。違いますか？

被告人　　　ち、ち、ち違います！あの島に何もありません！何もありません！

弁護人　　　異議あり！検察官の言うことは憶測の域を出ていません！

検察官　　　裁判官、以上です。

被告人　　　いや、ホントに何もないんです、あの島には。もう故意に当て逃げした事でいいからマジであの島には何も無いことを信じてください！本当に何もないんですってばーーーー！キキッ！

（ФωФ^) ( *⌒)

判決は「罰としてパールアビスから砲弾500発支給」としたかったけど若干砲弾が残ってきている今日この頃...。