去年のお彼岸を過ぎた頃のお話なんですけどね。

夏は毎年のように暑くなってますけど、気温に関係なくお彼岸の頃にはヒガンバナが咲き乱れるっていうのに、不思議と1週間くらい咲くのが遅くてね、なんだか気持ち悪かったんですよ。

車で出かけていましてね、走りなれた国道で右折しようと右折専用レーンで対向車の列が途切れるのを待っていたんですね。

国道といえども片側一車線の道路なので、なかなか対向車の列が途切れなくて、ボンヤリと前を見てたんです。

すると反対車線の右折専用レーンに止まっている車に目が留まったんですよ。

反対車線なのでちょうど私の車と対面する形で止まってますよね？普通はちょっと距離があるし、列が途切れないか気にするしで乗っている人に目を向ける事はあまり無いのですが、その時はなぁーんか気になったんですよね。

あ、気になると言えば私、【猫の穴】というギルドに入っていましてね、ちょっと気にしてもらえたらなぁーっイイナ、イイナァーっていつも思ってるんですよ。

それでですね、見ると軽トラックにおばあさんが乗っていて、何やら車内でお話してるみたいなんですよ。

助手席には誰も乗っていないので、後部座席の人と喋ってるのかな？ってなんとなく思ってたんですね。

でもなんか喋り方がいやぁーーな感じがするんですよね。

口を大きく開けているせいか、いやに口の中が黒く見えるんです。

するとこちら側の車線の列が途切れたのか、おばあさんの軽トラックがスーーーッと動き出したんですよね。

そこでようやく気付いたんですけど、軽トラックなので後部座席が無いんですよ。

あ、ちなみにうちのギルドは2人乗りじゃなくて48人乗りです。現在【35名】なのでまだまだまだまだ乗れますよ。

えーーーー？！じゃあおばあさんは誰と喋っているんだろう？って気になって見てると、なぜかおばあさんの軽トラックが右折せずにどんどんどんどん近付いてくるんですよね。

ヤダナヤダナヤダナ、コワイナコワイナって思って。

でも私はおばあさんが右折しない事より、おばあさんの口の中が気になって気になって目が離せなかったんですよ。

するとおばあさんの口が、どんどんどんどん大きく開いていって、それでどんどんどんどん車は近付いてきて。

もうハッキリ顔が見えるくらいに近付いた時に、ようやくなんで口の中が黒いのか分かったんですよ。

おばあさん、歯が全っ然、無かったんですね。

あ、おばあさんの歯は無かったんですが、うちのギルドは【攻撃Lv3、防御Lv1】があります。

そこで初めて私はおばあさんが右折してない事の重大さに気が付いたんですね。

うわぁ、どうしようと思いましたよ。

おばあさんは大きな口を開けて、車内に1人なのに大爆笑しながらどんどんどんどん近付いてくるわけですよ。

どうしようどうしようどうしよう・・・。

それでもどんどんどんどん近付いてくるんですよ。
あー、どうしようどうしようどうしよう！

そして恐怖にひきつる私を尻目に、すぅぅぅぅーーーーーーーーっと私の

左側を

走り去っていったんですね。

ちょっとおばあちゃん、逆走ぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅうう！！！！！

その後、対向車と正面衝突することなく、数十メートル逆走して脇道にそれて走り去って行きましたとさ。

（ФωФ^) ( *⌒)

「ずいぶん昔に入院した時に看護師さんに聞いた話なんですけどね」というバージョンと迷いましたが、長いので断念。