《金豚王伝》

《道徳山の説話》

昔々、ある村に新たに県監に就いた者がいました。
ところが、どういうわけか村には女性が一人も見当たらないのでした。


村の人々に聞いてみると、なんと、毎晩村から女性が一人ずつ消えていると言うのです。


そこで県監は、自身の妻の服に予め糸を巻き付けておきました。


その夜、県監の妻が消えてしまい、
巻き付けておいた糸を辿っていくと、金豚の棲み処に辿り着いたのです。


捕らえられていた県監の妻の話を聞き、金豚の弱点は「鹿の革」だということが分かりました。


「鹿の革」を手に入れ、寝ている金豚の体に当てると
金豚は大声で叫んだ後、倒れました。


金豚を退治した県監は、村の女性たちを連れて無事に山を下りることができました。


金豚は黄金の毛を持つ豚の妖怪で、洞窟を棲み処にして女性をさらって食べたり、
自身の世話をさせたりすることで知られている妖怪です。
金豚は、過去に祭祀で使われていた「鹿の革」をとても嫌うと伝えられています。



前回までのお話はこちら！

《巫堂霊伝》


《ソンカクシ伝》


《九尾狐伝》